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序章(プロローグ)
壁面にママが叩き付けられ、顔面を壁に圧迫される様を見ながら、僕はクラムチャウダーをスプーンから啜る。
その無慈悲な掌の間から覗くママの眼先には、僕がいる。
「ごちそうさま」僕は2階に駆け登った。
西船橋駅の改札を、男子高校生が、朦朧とした状態でパスケースを、かざして通過する。
今日の進路判定模試で、T大学の判定が厳しかった場合、進路の変更を余儀なくされる。
そうなれば、パパは、あからさまに舌打ちをし、ママを叱咤し、壊しだす。
朝、ママは食事の用意をしながら、僕を見つめ「次、頑張ろうね」って、全くの無表情で諭すんだ。
あの顔を見ると、喉の奥が苦いもので圧迫される。
エスカレータで1番ホームに降りた男子高校生は、隣のホームで、あいつを見つけた。
「なんだ、あいつ、いるじゃないか」
高校生は、通勤ラッシュで込み合う乗客の列を掻き分け、あいつの背後に立った。
後ろの禿げたジジイが「おい、割り込むなよ」と言っていたが、男子高校生は躊躇する事無く、背中を押した。
一瞬だけ、あいつは線路内で宙に浮いていたが、次の瞬間には、東西線の電車が、その体ごと持って行ってしまっていた。悲鳴と叫び声の中で、高校生は考えた。
ところで、あいつ誰だっけ?
後ろの禿げたジジイに体を取り押さえられた高校生は、歯ぎしりをしながら
くそっ!これで模試に間に合わない。
僕の人生が狂ったら、こいつのせいだ。
僕のせいじゃない。
だから、どうか、ママを殴らないでくれって、パパに懇願するんだ。
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