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高校時代11(十五年前_教室にて_高校1年生)
【十五年前、八雲直毅 高校1年生_船橋中央高校】
転入時に注目を浴びた亜希だったが、一週間もすると、周りの女子は亜希を避けるようになった。
八雲のクラスには、女子のリーダー的存在が二人いて、瑞穂を無視するように、女子に根回しをしている事に気づいた亜希は、その二人と喧嘩して、クラスで孤立していた。
「くっそ。あの性格も顔もブス女ども、肥溜めの近く歩いていたら、蹴って落としてやる」
英嗣は、クククと笑いながら
「なんだそりゃ、亜希が、前に住んでいた佐賀県は、まだ、肥溜め使って農業してんの?」
「たとえや。英嗣が考えているより、ちょっとだけ佐賀は発展してるよ。馬鹿にすんな」
「ちょっとだけやないか」
亜希が、漫才に加わって、トリオになり、益々手が付けられない。
龍太郎は、八雲が弁当を食べている傍で、わざと、スパイクを取り出し、臭いを嗅ぐ真似をした。
「俺さ、三日くらい連続で同じ靴下を履いていて、試しに大家の犬に嗅がせたら、キャンって言って逃げて行ったよ」と笑う
亜希は、ファッション誌の髪型特集の項を机の上で開き、パックの牛乳にストローを差しながら、無視している。
「亜希も瑞穂も、ちゃんと靴下洗った方がいいぜ。足臭くなるからな」と龍太郎が、いつも通りの無神経さで、話を二人に振った。その時である
「私の足は臭くない!」
教室中に大きな声が響き渡った。それは、なんと瑞穂の声だった。
瑞穂の大きな声を、初めて聞いた三人は驚き、隣でストローを咥えたまま亜希が、目を丸くした。
だが、次の瞬間、龍太郎と亜希は、顔を見合わせて、爆笑する。
「アハハハハ。ほら、龍太郎!アハハ 瑞穂が、怒ってるじゃないの。謝りなよ~。アハハハ」
亜希は、謝れと言いながらも腹を抱えながら笑っている。
「ワリィ。瑞穂、別にお前の足が臭いとか、言ってないじゃないか、そんなに怒るなよ。ガハハハハ」
八雲と、英嗣は何が可笑しいのか、全く分からずにキョトンとしている。
瑞穂は、長い前髪と縁の太い眼鏡で、その表情は確認できなかったが、耳が真っ赤になっていた。
「あ、あ、あ、亜希ちゃんも、わ、わ、わ、笑いすぎだよ。も、もう。」
「ごめん、ごめん。瑞穂」と亜希は、後ろから軽くハグして、牛乳パックを、教室後方のゴミ箱に捨てる為に、歩いて行く。
昼休みが終わるチャイムが鳴り、龍太郎は、教室に戻る為に立ち上がり、瑞穂の机の脇で歩を止めると
「瑞穂。おまえ、さっき、ドモらなかったな」と言って、肩をポンと叩いて出て行った。
龍太郎の言動の意味に気づき、瑞穂は茫然としていた。
本人も気づかない違和感に、濱野と亜希だけは気づいていた。
相関図
八雲 直毅(船橋中央高校1年生)
濱野 龍太郎(船橋中央高校1年生)
松木 英嗣(船橋中央高校1年生)
小住 瑞穂(船橋中央高校1年生)
城石 亜希子(船橋中央高校1年生)
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