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高校時代12(十五年前_二学期_高校1年生)
【十五年前、八雲直毅 高校1年生_船橋中央高校】
ほどなくして、学校は夏休みに入った。卓球部の八雲と、野球部の龍太郎と英嗣は一日練習に追われた。
時々、学校に設置してある自動販売機の前で偶然会うくらいだったし、瑞穂と亜希に関しては部活動に所属していないため会う機会は無かった。
夏休みも終わりの時期に、新人戦の前哨戦と呼ばれる大会が市民体育館で開催された。
大会の運営補助を毎年持ち回りで行っており、その年、八雲の高校が当番で、一年生は交通誘導やら、大会サポートに走り回っていた。八雲もゲストチームを誘導する係に従事していたのだが大会会場の廊下に、なぜか亜希が立っている。
タンクトップにデニムのショートパンツというスポーティな恰好で、八雲を見つけて、手を振っている。
「亜希、なんでココにいるんだ」
亜希はニコニコしながら、敬礼の真似をして見せる。亜希の背中に隠れて、白いワンピースのキレイな顔をした少女が、ぺこりと頭を下げた。
「オイ!八雲、集合だぞ!」後ろから、卓球部の先輩が呼びかける。
「ハイ、今行きます」
亜希の元から、走り去った八雲だったが、後ろにいた女の子を何処かで見たような気がしていた。
※
二学期が始まる9月1日、朝練を終えて、教室に行くと、クラス全体が、ざわついている。
「なにかあったの?」クラスメイトの一人に聞くと「あれだよ。小住!小住!」
どうやら、クラスの女子が、とり囲んでいるのは、瑞穂らしい。その人ごみの中を、覗いてみると、前日の卓球大会に亜希と一緒に来ていた少女がいた。
長い前髪を綺麗に切って、背中の真ん中まであった髪も肩くらいになっている。眼鏡を外しているので分からなかったが、それは瑞穂だった。
「ショートボブって言うんだよ。」亜希が自慢げに、集まった女子に言っている。
どうやら、髪を切ったのは亜希のようだ。
城石さん、私も切ってよと、集まった女子から次々と声が掛かる。
クラスを牛耳っていた女子達は、遠目から、面白くなさそうに眺めている。
昼休みになり、隣のクラスから英嗣が弁当を持って八雲の隣に座った。
「あれ、お前のクラス、転校生がいるじゃん。しかも美少女!」
「おい!八雲、紹介しろ。」
八雲は弁当を開けながら「小住だよ。あの子。」
「は?そういえば瑞穂は、休みか?」
亜希と、瑞穂が、弁当を持って八雲の近くに座る。
「ま、ま、ま、松木くん。ひ、ひ、ひさしぶりだね。」
瑞穂の変化に驚いた英嗣が固まる。「まじか」
その直後に、購買部からパンを買ってきた龍太郎が入ってきた。
「ヨウヨウ、皆の衆、元気してたかな。俺様に会えなくて、さぞ寂しかったろう!」
大量のパンの山をドシッと机の上に置き、瑞穂のほうを向いた
「お!瑞穂!髪を切ったのか?そっちの方が似合ってんぞ」
その言葉に、亜希が「あんたさ!いつも無神経なのに、こういう大事な所で・・」
瑞穂は龍太郎に「は、濱野君ありがとう。亜希ちゃんに切ってもらったんだ。」
龍太郎は、焼きそばパンを頬張りながら、
「そうなのか。亜希、今度俺も切ってくれよ。勿論タダでな」
亜希はイライラしながら「あんたの、そのほとんど坊主頭を、どうアレンジすんだよ!」
亜希は、八雲の方を向いて、
「八雲!お前は、何もないんか。この鈍感スカンピンが!」と何故か怒っている。
「おいおい、女の子の日までは、まだ早いと思うが・・・・」と英嗣がまた、無神経な発言をしたので、亜希が英嗣の横腹を蹴った。
その日から、不思議な事が起こった。瑞穂は、龍太郎と話すときは、吃音が出なくなった。
相関図
八雲 直毅(船橋中央高校1年生)
濱野 龍太郎(船橋中央高校1年生)
松木 英嗣(船橋中央高校1年生)
小住 瑞穂(船橋中央高校1年生)
城石 亜希子(船橋中央高校1年生)
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