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現在18(城北高校_メディア教室にて_神坂奈々美)
生徒が居なくなったメディア教室で、八雲は掲示板に、情報処理技術者試験のポスターを貼っている時だった。
「八雲先生ここにいた!探したよ!」
神坂奈々美が、教室に入ってきた。
「お疲れさん。昨日のバラエティ番組見たぞ。おまえ、さすがに、あんな変顔したら、ファンが減るだろう。はは」
最後の押しピンを止めながら、八雲は神坂を見る。
「番組終わりに速攻で、社長から電話掛かってきて、やり過ぎだって怒られたよ。それ以上にマネージャーが怒られてたけど」
神坂は掲示板の近くの椅子に座り
「八雲先生、ちょっと、お願いがあるんだけど・・・」
「おう。どんなこと?進路相談とかは、志田先生にしろよ。この前、志田先生が酔っぱらって絡んできたよ。なんで自分を頼ってくれないのかって」
神坂は、眉間に皺を寄せて
「いや~~なんだかなぁ~。この前、二人きりになった時とかさ、同期の教師が教え子と結婚したんだけど、神坂どう思う?とか聞くんだよ。ちょっと気持ち悪くて・・・」
八雲も、さすがに神坂に同情した。
「そんなことはどうでも良いの。お願いしたいのはね。昨日先生が見てくれた番組の中で【答えは、探偵の奈々美に聞け】というコーナーを作ってくれるの。私が、探偵の格好をして、最後にズバリ回答を出すって企画。それでね、その時に掛け声があるんだけど、近しい人に音声サンプルを取ってきて、ディレクターから頼まれてて、ちょっと手伝ってくれない?」
「音声サンプルって、どんなのだ?」
「私がね、答えはー?って聞くから、先生は」
神坂は少し、息を吸ってから
「ナナ!って答えて」
ナナと言うのは、奈々美を略した愛称らしい。
「そんなことか、いいよ」
ありがとう。と言いながら、神坂はカバンから黒縁の眼鏡を取り出した。
「探偵の格好で、この眼鏡をかけるの・・・・そうだ!ちょっと先生、この眼鏡掛けてみて」
「ん?神坂が掛けるんじゃないの?」
「いいじゃん。ちょっと先生の眼鏡姿に興味が湧いたの」ホラと言いながら、八雲に強引に眼鏡を掛けた。
「これ、結構、度が入っているな」
と神坂を見ると、八雲をジッと見つめている。
「あ!あーいいね。いいね。先生いいよ」じゃあ、始めるねと神坂はスマホを取り出した。
基本的には、スマホは校内禁止なのだが、神坂は特例で許されている。
他の生徒もカバンに隠して持ってきているのだが、学校側も暗黙の了解と言う形を取っている。
神坂はスマホのカメラを八雲に向けた。スマホからピッと電子音がする。
「いくよ。答えは~」
「ナナ」
「だめだめ。おにぃ・・・・・八雲先生、鬼、声が小さいよ。それと私を呼びかけるようにして」
「これは、なかなか緊張するなぁ」と八雲が眼鏡を外そうとした時だった。
「眼鏡はかけたまま!」神坂が言って、慌ててスマホを構える。
「先生、テイク2だよ。神坂監督は怒っていますよ~。答えは~」
「ナナァ!」
八雲は、照れながらも少し声を張った。
「ちょっとカメラチェックするね」神坂は数回、動画を見直しては、イイね。イイねと喜んでいる。
「ハイ。八雲先生、クランクアップです。拍手!先生、良い役者になれるよ」
「そうか。じゃあ、今度、映画監督に推薦しといてくれ」と眼鏡を返した。
「動画は、校長の許可がいるから、音声だけな」神坂はオーケーと言いながら、ニコニコしている。
その時、神坂のスマホが鳴った。ラインの様だ。神坂が確認すると
「なんか、マネージャーが近くのコンビニで接触事故を起こしたみたいなの。私行くね。先生ありがとう」
慌ただしく、出て行った。
相関図
八雲 直毅(城北高校の物理教師)
神坂 奈々美(城北高校生徒・アイドル)
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