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1. ハイパーネガティブ小学生
ああ、嫌だ…。耐えられない。
「愛知県から転校してきた、青野光輝くんです。」
担任の石塚先生は、ゆっくり丁寧に、黒板に僕の名前を書く。
みんなに注目されるこの瞬間…。早く終わって欲しい。
非常ベルが誤作動して鳴らないかな…。
もしくは地震が起きてもいい。震度4以下に限るけど…。
光輝…。光り輝やく…。
親は嫌いじゃないけど、僕にこんな名前つけるなんて…どうかしている。
漢字の光が2つもあるキラキラした名前とはうらはらに、僕の心はくすんで濁っている。
達筆で美しく書かれた「青野光輝」…横にいるのは、イケメン転校生であって欲しいのにと、女子は思っているはず。
目鼻立のはっきりしていない、モブ顔でゴメンなさい。
「よっ、よろしく…、おね、おっねがいします。」
挨拶というより、お詫びをする気分で頭を下げる。
「みんな、仲良くしてね。あ、そうだ…。今日からクラスが変わって、初めて話す子達が多いと思います。先生からお願いです…。お話する時、お互いの親が何をやっているかは…聞かないで欲しいの。」
僕は驚いて石塚先生を見上げる。
優しそうな女性教師で、安心していたのに…。
こんなに空気が読めない人なんて、がっかりだ!
今、それ言う?タイミング考えてよー!
みんな僕の親が訳ありって思うでしょ。
どうせなら、4時間目の道徳の授業で、じっくり話せばいいじゃん。
石塚先生の配慮のなさに、癇癪が起きそうになるのをグッとこらえて、指定された席に着く…。
「よろしく。俺、赤城。」
隣の席になった男子は、爽やかに挨拶をしてくれる。
優しそうな子!と思い横を見る…。
しかし、赤城くんは声はいい奴っぽいが、目つきが鋭く顔が怖い。
4月の新学期…。席替えは、しばらくはないだろう。
赤城くんとは、離れられない。
「こ、こちらこそ、よろしく…。」服従するかの如く、とびっきりの猫背体制で返事をする。
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