1. ハイパーネガティブ小学生

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 幸い授業は愛知県とさほど変わらない。  でも教科書は愛知県と群馬県では違うので、石塚先生にスペアを貸してもらえた。  隣の席の子に見せてもらうパターンじゃなく、助かった…。  勉強は苦手じゃない。  だけど、これといって好きな教科はない。  学校には、僕の好きなものは何もない…。    給食はお母さんのご飯の方が美味しいし、運動神経は悪くはないけど、体育の授業は団体行動が苦痛だ。  授業中、気づかれないように赤城くんを観察する。  ドクロのトレーナーを着ている。デザインはアレだけど、生地はしっかりして高そうだ。お金持ちの子なのかな?  群馬県はヤンキーが多いって、転校する前クラスメイトが言っていたな。  ヤンキーの判断基準…ドクロのトレーナーは該当するような気がする。  洋服に興味はない。着ている服はお母さんが全部選んでいる。小学校五年生だと普通だろう。  赤城くんは自分でドクロを選んだのかな?  色々考えていると…あっという間に放課後になった。  ノソノソと帰る準備をして、石塚先生に教科書を返すため、職員室に行く。  職員室に入ると石塚先生は赤城くんと話している。 「遅くなってすみません。父のファイトマネーが入りましたので、これ受け取って下さい。」  赤城くんは封筒を渡している。中にはお金が入っているようだ。  父のファイトマネー?  群馬では給料をそう呼ぶのかな?  頑張ったお金って、なんか響きがいいな。 2人のやり取りを邪魔しないように、脇で見守っていると、副担任の先生が僕に気づき、教科書を回収してくれた。 石塚先生に挨拶できなかったけど、まあいいやと思い、その日は寄り道せず1人で家に帰った。  
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