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「雨やみませんね...」私は長い沈黙のあとやっと口を開いた。 隣の女の人は静かに頷いた。それ以上何も喋らない。 (何か喋らなきゃ...) 私は考えた。この沈黙を破るにはどんな話題が必要だろうか?考えろ、きっと見つかる。 私は今、閉店した駄菓子屋の前で雨宿りをしている。びしょびしょになった制服に居心地の悪さを感じた。朝学校に登校するとき傘は持ってた。でも帰り、傘たてに置いておいた傘は消えてた。誰かが間違えて持っていったのか、はたまた盗んだのかはわからない。別にビニール傘だったから、悲しくなんかない。ただ雨で濡れてしまう、その事が凄く不快だった。綺麗にセットした前髪も、メイクもぐちゃぐちゃになる。家まではそこそこ遠い。とりあえず、ここで雨宿りしながら髪やメイクを整えて、雨がやむのを待とうと思った。 でも、私が来たとき先客がいたのだ。 髪が腰まである女の人。背が高くてスタイルも良くて凄く美人だった。見たことない人。きっとここに住んでる人じゃない。私がじーっとその人を見つめていると、目が合った。少し微笑んで会釈した。その姿にドキッとして、視線を戻す。でもその人は喋らなかった。一言も言葉を交わさず長い気まずい時間が淡々と流れていく。 沈黙が嫌いな私は、いろんな話題をふってみた。髪綺麗ですねとか雨凄いですねとか。でも微笑むか頷くだけで、喋ろうとしない。 (何かないのかな...この人が喋りそうな話) 私が真剣に考えてる横で、女の人は微動だにせず雨を見つめている。 私も雨に視線を戻す。音をたてながら地面に叩きつけるように降る雨。地面にあたって砕け、小さな水しぶきをあげる。
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