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「私.....雨が嫌いで、じめじめするし濡れるし、そう思いませんか?」私はまた何気なく会話を始めた。 その時、女の人が勢いよく振り返って私を怖い顔で睨んだ。さっきの優しい笑顔と違って、雨を見つめる無表情な顔とは違って...。 私は怖くて固まってしまった。目をそらすことが出来ない。吸い込まれそう。 「雨が好きなんですか?ご、ごめんなさい、勝手な憶測で傷つ」すると、女の人は突然無表情に戻り人差し指を口に近付けシーっと言った。 私は黙った。ようは喋るなってことだ。私だって空気くらい読める。でも、喋ってないといけない...もしこの駄菓子屋の前をクラスメートが通ったとき、 変に思われないように..... 『美由ちゃんは誰とでも仲良くなれるのね』 これが小さいとき言われた一番好きな言葉。 そう、私は明るくてみんなを想ってあげなきゃいけない。一人の子には積極的に話しかけて、ケンカをしていたら間に入って止める。それが小さいときからの私の役目。 もし、ここでクラスメートにあったら? 女の人と何も喋らない私を見て、きっと変に思う。築き上げたものが崩れ落ちる。私にはもう.....。 「どうして喋らないんですか?」私は勇気を出して聞いてみた。 すると、女の人はキョトンとした顔をした。 「音が聞こえるの」女の人は一言そういった。初めて聞いた女の人の声は思ったより低かった。 「...音?」女の人は音楽でもなく声でもなく音と答えた。 「そう、音よ」そう言うと、また沈黙が流れた。女の人の方を見ると、目を閉じて微笑んでいる。一体何が聞こえているんだろう? 私は女の人を真似て、目を閉じた。これで何か聞こえるのだろうか。すると、急にまたさっきの低い声がした。 「聞こえるでしょ、優しい雨の音が」その声は小さく雨の音に溶け込んでいく。 雨は激しいのに音はとても静かだった。サーという降る音とポツッという地面に当たる音、たまに聞こえるポチャンという可愛い音。 あれ、雨ってこんな音だったっけ... こんなに繊細だった? 気のせいかな、今まで聞いたことない音だ。
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