ほほえみのゆくえ

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いえについたら、おとうさんがしんぱいしてくれた。 ぼくなら、だいじょうぶなのに。 でも、ひざをみたらきずぐちがみえたんだ。 ん、あれ? おかしいな。 いつもなら、くまがわらっているはずなのに。 ぼくのズボンのアップリケ、どこかにきえちゃった。 おかあさんがつけてくれた、おもいでのアップリケ。 かなしいかな、くやしいかな、なんだろうな。 わからないけれど、ぼく、ないちゃった。 なみだがとまらない。 おかあさんとやくそくしたのに。 なかないってやくそくしたのに。 アップリケのようにわらうって、ゆびきりしたのに。 おかあさんがしんじゃってから、はじめてないちゃった。 おとうさん、ごめんなさい。 おかあさんとのやくそく、やぶっちゃった。 そういったら、おとうさん、ぼくをだきしめた。 おとうさんわらいながら、ないてた。 へんなの。 でも、なんだか、ぼくももっとなきたくなってきちゃった。 おかあさん、ごめんなさい。 きょうだけは、なきむしのぼくとおとうさんをゆるしてね。 おかあさん、ごめんなさい。 だいじなだいじなアップリケ、どこかとおくへきえちゃった。
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