ただ、そこにいるだけ、

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6月、梅雨間の晴れた日の水曜日 窓から差し込む強い光に目覚めを急かされ 今日も一日が始まった 設定中のアラームが鳴る前にいつも目覚める 毎晩3分の1だけカーテンを開けて その間から注ぐぼんやりとした光に包まれ 眠りにつく 夜は月明かりで青白く弱い光を感じ 朝方4時頃には光の色はほとんど白になっていく 鳥たちが忙しそうに鳴きながら飛び回り その声にうっすらと目が覚める そして手元のスマホで4時の文字を確認すると 2度寝に入る 7時近くまで眠ると窓から入る光は いっそう強く真奈美は完全に目が覚める 窓を開けると 鳥たちは穏やかな声で鳴き 木や電線、人の家の屋根に止まったりしている レースのカーテンだけを閉めて ベッドを整えると スマホを片手に1階に降りた キッチンに立つ母は トーストを焼いている ダイニングテーブルには母の手作りの ハーブティーがポットにいれられている 6月に入り最近は気温も30度を超えることもあるというのに、この家は年中 朝は温かい飲み物しか出ない 溜め息をつきながら 自分の席にスマホを置くと テレビのリモコンでいつもの番組に チャンネルを合わせる 特別、観たいわけではない 画面右上の時間と天気が見やすいから この番組にしている テレビが付くと キッチンにいた母が振り返り 「あら、いたの、今日は何にする?」 「そのままでいい」 それだけ言うとダイニングをあとに 洗面所へ向かう
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