恋をするということ

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 最近綺麗になった? バイト先の先輩に聞かれた。 「気のせいですよ。 ほら、お仕事頑張りましょう。」 笑ってはぐらかすがその原因は自覚している。 新しくできたカフェの店長。 私は高校生、彼は大人の男の人。 不相応なのは承知の上で彼に一方的な恋心を抱いている。 「何、ニヤけて〜。 いいことあった?」 「べ、別にそんなわけじゃ…。」 「ふふ、おねーさん気になっちゃうなぁ。」 先輩は色白で誰にでも優しくて素敵な女性。 教えたらとられてしまうかもしれない。 心の底からもやっとした嫌な気持ちが湧き上がってくる。  品出しの手が止まってしまう。 ダメだ。 私の中の素敵度が減ってしまう。 バイト中、嫌な考えが堂々巡りで気もそぞろ。 小さなミスを連発し、上司からもお叱りを受けた。  そんな帰り道。 いつもの楽しみとしてあのカフェに行く。 「いらっしゃい。 今日は何にする?」 出迎えてくれたのは憧れの店長。 「カ、カフェラテで。」 落ち込んでいた気分が一気に晴れやかになる。 「オーケーカフェラテね。 あれ?雰囲気変わった?」 店長までそんなことを言ってくれるなんて。 顔中に熱が集まる。 「い、いえ特に何かを変えたことは…ないです。」 真っ赤になって俯いているとカフェラテと頼んでもないマカロンが添えられた。 「なんか元気無いみたいだったから。 それ、僕からのサービス。」 そうお茶目に店長は笑いかけてくれる。 その笑顔だけでも胸いっぱいになってしまう! 嗚呼、なんて優しい人なのだろう。 「あ、ありがとうございます!」 慌てながらお礼をし、カフェラテとマカロンをいただく。 この時間帯は学生が多く来店していてチラチラ店長を見ている女子高生は多い。 「それで、何か悩んでいるのかな?」 ティーカップを拭きながら店長は視線を気にせず私に話しかける。 「悩みってほどじゃ無いのですけど…。」 流石にこの場で貴方が好きです!なんて言える勇気はない。 ごにょごにょと唸る。 すると頬を撫でられて顔を上げる。 キスするかの距離、綺麗な顔立ちが目の前に。  アーモンド色の綺麗な瞳、優しそうな眉、スッと通った鼻筋。 一体、どれほどの女性を魅了してきたのだろう。 その顔に見惚れていると彼が急に一言。 「最近、なんか綺麗になってきたね。」 同性の先輩に言われるよりも誰よりも言われたい一言。 私は頭のキャパシティオーバーを起こしてたじろく。 「そ、そんな綺麗だなんてからかわないでください。」 「ん?冗談じゃないのだけどなぁ。」 ニコニコそう返す彼の言葉を本気にしていいのだろうか?
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