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気がつくと、彼女はザーザー降りの外を眺めていた。
「夕花、もう平気なのか…? 」
俺はそう声をかけていた。
他にも言葉を用意していたはずだが、咄嗟にでたのはその言葉だった。
「平気って言いたいけど、ダメみたいなの。」
彼女はいつも通りの笑顔でそう言った。
だから、冗談かと思ったけどどうやら違うらしい。
「あのね…」、と言って彼女は寝ていた時に見た夢の話をしてくれた。
「神様って、優しいのか酷いのかよく分からないよね。1週間だけ、死ぬのを待ってあげるから言いたいこと言いに行けだなんて」
彼女の顔から笑顔が消えた。
死を前にしたら人間誰しもこうなるよな。
それに、彼女が夢の中で見た、白ひげのジジイが本当に神なのかなんてことは誰にも分からない。
けど、恐怖心を煽られただろう。
今は、とにかく、彼女が誰に対して言いたいことがあるのか気になっていた。
まあ、気にしたところで俺の彼女への気持ちが言葉にせず彼女に伝わるわけじゃないか、この一週間を使って、伝えよう。
頑張ってはみたんだが、結構すぐ来るのが最終日ってやつだ。
夏休みといい、連休といい。
ほんとに、すぐ終わるんだよな。
「あっという間だったね! 1週間…」
彼女は自宅のベッドに座っていた。
最後くらいは自分の部屋がいいと言うので、一緒に彼女のベッドに座っていた。
最後だからと言って、彼女は繋げる限り、俺の手を繋いでいた。
もちろん今もはなしてくれない。
「○○くん、やまない雨はないから、きっと私が居なくなって、君が1人になっても、雨がどんなに降り続いても、ちゃんとやむから。君の涙も雨も」
ごめんね、君の笑顔が大好きなのに最後の最後に泣かせちゃった。
そう言ってくれた彼女も涙が止まらないようだ。
鼻が赤くなっている。
「謝るのは俺の方だ。ずっと先延ばしにしてて、ごめんな。俺、夕花の事がずっと好きで、でも。振られたらこうやって話すことが出来なくなるんじゃないかなって思って言えなかった」
「終わるわけないじゃん。私も好きです。やっと言えた。えへへ、もう行かなきゃなのか。君はこの一週間を、忘れないでね。私は多分忘れちゃうから」
最後の最後に、徐々に手が冷たくなりながらも彼女は言った。
「生まれ変わったら、二人で歳をとれる世界を作ろうね…」
「あら〜、申し訳ないけど、それは僕が阻止するよ。二度とそんな世界作らせないよ。そんな世界は二度と」
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