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「じゃあ、これでサヨナラだね。最後に、好きです。本当ならここから物語が始まるはずなのにね」
20XX年。6月某日。
「雨やだなぁ…。私は梅雨が一番嫌い」
俺が小学生の時から好きな少女は毎年梅雨入りするとこのセリフを呟く。
俺もジメジメ、ベトベトするのでどちらかと言えば嫌いだ。
俺らしかいない教室で近からず遠からずな微妙な距離なので少し声を大きめに俺も呟く。
「なあ、夕花さんや、それもう今年で6回目だよ。毎年言ってるよな、一言一句変わらず」
どんだけ文句を言っても日本にいる限りは、毎年来るものだぞ?
なんて言ったら彼女のぷにぷにとしている頬を膨らまして拗ねてしまうので言うのを辞めた。
「うー。じゃあ、来年はこのセリフを言わないようにします! てなわけで、私は来年に備えるために先に帰る!」
『ドロン!』って、言って徒歩で帰っていった。
俺はもう少しだけ雨が弱くなるのを待ってからにした。
その日の夜、いつもならならない電話がなった。
『あのね、夕花がね、今日の帰り車に轢かれて…』
夕花のお母さんの声は震えていた。
それ以上俺は聞いていられなくてとりあえず、傘を刺さずに大雨の中彼女がいる病院に向かった。
「来てくれてありがとう…。今は寝てるみたい…。そのうち起きるとお医者さんは言ってたわ…」
必死に走ってバカみたいだなって思ってしまった。
とりあえずびしょびしょになってしまったのでおばさんにタオルを借りてある程度水気を切った。
いや、水気を切るだと俺が食べ物みたいなので、拭いたと訂正しておく。
「私、夕花の着替え取りに帰るから夕花の様子見てもらっていいかな? 」
大丈夫です、見てます。
そう言ったら安心した顔をしておばさんは病室を出ていった。
いつもおばさんは長めのタオルを持ち歩いてるから助かった。
俺の服の水分がだいぶ少なくなったのでとりあえず、椅子に座って夕花を見守ることに。
初めてまともに見る寝顔が、頭に包帯が巻かれてて、顔には無数の小さな傷があったり、手にも包帯が。
でも本当に生きててくれてよかった。
いつもの彼女がいる生活がここで終わらなくてよかった。
だが、こんなにボロボロになった少女を見ていたら、目から透明な血液が流れ出していた。
あまりにも大量に出てしまったようで、いつの間にか、気を失っていた。
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