5章 汀ブレンド

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「悪いんだが、もう一つ注文しても良いかな」 「もちろんです。何になさいますか?」 珍しいな、と思いつつも身体ごと後ろを振り向いた。 先生が一度の来店で三つも注文するのは、今回が初めてだ。 何かあったのだろうか。 しかし、色々と思考をめぐらせる間もなく、 先生が両手で何かを挟むようなジェスチャーをした。 「〈玉子サンド〉にするかな。話していたら、何だか腹が減ってきた」 それを聞いて、僕は倉庫の状況を思い返した。 棚に玉子が残っていたか、確認しなければ分からなかった。 「倉庫を確認してきますね。材料が残っていたかどうか……」 僕が言うと、先生は頭の横で小さく片手を振った。 了承の意を示す時に見せる、先生独自のハンドサインだ。 「ああ、悪いね。急がなくて良いから、よろしく頼むよ」 「分かりました」 そう言って、僕は店を後にした。 もし倉庫に残っていなかったら、鶏小屋まで取りにいかなければならない。 急がなくて良いとは言われたが、 なるべく早く戻れるよう、僕は歩幅を大きくした。
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