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「悪いんだが、もう一つ注文しても良いかな」
「もちろんです。何になさいますか?」
珍しいな、と思いつつも身体ごと後ろを振り向いた。
先生が一度の来店で三つも注文するのは、今回が初めてだ。
何かあったのだろうか。
しかし、色々と思考をめぐらせる間もなく、
先生が両手で何かを挟むようなジェスチャーをした。
「〈玉子サンド〉にするかな。話していたら、何だか腹が減ってきた」
それを聞いて、僕は倉庫の状況を思い返した。
棚に玉子が残っていたか、確認しなければ分からなかった。
「倉庫を確認してきますね。材料が残っていたかどうか……」
僕が言うと、先生は頭の横で小さく片手を振った。
了承の意を示す時に見せる、先生独自のハンドサインだ。
「ああ、悪いね。急がなくて良いから、よろしく頼むよ」
「分かりました」
そう言って、僕は店を後にした。
もし倉庫に残っていなかったら、鶏小屋まで取りにいかなければならない。
急がなくて良いとは言われたが、
なるべく早く戻れるよう、僕は歩幅を大きくした。
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