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材料を抱えて店に戻ると、先生はいなかった。
手ぶらだったので、荷物はもちろん残っていない。
真ん中の丸椅子は、両隣の椅子に合わせてきちんと元の位置に戻されていた。
カウンターの上を見る。
空になったカップの脇に、一枚の絵と、
見覚えのない文庫本が一冊置いてあった。
僕は一枚の絵を手に取った。
子どもの落書きみたいな絵が描かれてある。
我ながら壊滅的な絵だ。
キリンを描いたつもりが、
どう見ても正しく育たなかったピーマンにしか見えない。
ふと、絵の下に薄く文字の跡が見えた。
窓から差し込む陽に透かしてみて、ハッとして紙を裏返す。
そこには、綺麗な筆跡でビッシリと文字が書かれていた。
極端に右上がりなのは、先生の字の特徴だ。
腰のエプロンを外して、真ん中の丸椅子に腰掛ける。
窓から吹き込む秋風を無視して、僕はその文面に視線を落とした。
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