01.レッドは、出逢う

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◻︎ 暫く車を走らせていると、隣に座っていた彼女は姿勢をきっちりと正したまま、こちらに上体を向けた。 「た、助けていただいてありがとうございました。」 「…うん。で、あんた何者。」 「()()ひよりと言います。18歳の高3です。」 「…お前、犯罪では…」 「潮音さんうるさい。大体人のこと言えないでしょ。」 運転席でそう言う潮音さんを制してミラー越しに睨む。 潮音さんの奥さんが、うちの事務所の看板シンガーソングライターの"ミツキ"だというのは業界でも有名な話だ。 その昔、高校生だった美月さんの声(多分声だけじゃ無いが)に惚れ込んでスカウトをし続けたらしい。 自分のことを冷やかされるのは気にくわないのか、潮音さんは不満げに目を細めてそれ以上は何も言わなかった。 「あの、ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。」 ぺこり、そう頭を下げる彼女はやはり綺麗な顔立ちをしていた。 「……別に、良いけど。新人?」 「…い、いえ!私は芸能の仕事をやってるわけではないんです。 私の弟が、今子役として活動していて、たまに放送局に様子を見に来ていて…」 「弟…」 「その弟さんも今日は一緒じゃなくて良かったのか。」 潮音さんがそう尋ねる。 なんだかんだこの人、お人好しだと思う。
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