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「…あ…」
「…?」
今度は気まずそうに、下を向く彼女。忙しい奴だな。
「あの。本当に、ごめんなさい。
お名前、なんて仰るんですか?」
「………は?」
「ぶっ、」
前から何か吹き出した音が聞こえたが、俺は無視して続ける。
「…知らないの?」
「ご、ごめんなさい。
弟がよく写真とかで見せてくれたレッドさんのことしか、分かりません。
失礼で大変、申し訳ありません…」
段々、言葉尻がより小さく消えていきそうになりながらそう伝える彼女。
「……潮音さん、笑いすぎだから。」
「…ごめん、ちょっと面白すぎた。」
運転席でクツクツと、隠すことなく笑う潮音さんを一瞬睨む。
でも、気持ちは同感だ。
名前なんて聞かれたの、いつ以来だろう。
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