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「……え…?……かえで!?」
驚いたようにそう言ったひよりは、急いで車のドアを開ける。
暗闇の中、アパートの外階段で座り込んでいるのは小さな男の子だった。
自然と、俺も車から降りる。
潮音さんが、お前も降りるのかよという視線を向けてきた気がするがそんなのは無視だ。
「ひい姉。遅い、どこ行ってたんだよ。」
「かえでこそ、どうしてここにいるの!こんな時間に、危ないでしょう!?」
こちらに気付いた少年は、立ち上がって軽い足取りで近づいてくる。外灯に照らされて漸く見えたその顔は、深い青色の瞳の美少年だった。
「あのババアがひい姉が逃げたって連絡してきたから、現場からそのまま様子見にきたんだろ。今日は泊まるって言ってあるから平気だし。」
「そ、そうか…ごめんね。あとババアって言っちゃダメだっていつも言ってるでしょ。」
「……ひい姉。収録とか撮影も、観にこなくて良いから。俺、大丈夫だってずっと言ってるじゃん。」
「……うん。かえで、でもね、」
「ひい姉は、これからは自分の仕事のことを…あれ?誰?」
後ろでその会話を聞いていると、弟の方が俺に気がついたようだ。
「…あ、ごめんなさい穂積さん。出てきていただいてしまって。」
「ほづみ…?
…え!?!?レッド!?!」
弟の声は、閑静な住宅街に響き渡った。
さすが兄弟。
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