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かえでが起きていたのは、最初から分かっていた。
「……レッド、ごめんなさい。」
俺の膝の上で、体勢は変えることなくかえではそう呟いた。
「兄弟揃ってその呼び方やめろって。」
「…し、失礼しました。穂積さん、あの、」
怒られていると思ったのか、急に余所余所しい言葉を用い始めたかえで。
やはりこの世界に何年もいるだけあって敬語はきちんと使えるようだ。
「…いいよ昴で。敬語も要らないし。」
でも、初対面のあの勢いを見てしまった後だと違和感しか無い。俺は、笑いながらかえでにそう言葉をかける。
すると、その瞬間。
かえでは俺の服の裾を、ぎゅっと握った。
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