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「…ここ、自由に使って良いみたいだから。」
「あ、ありがとうございます…かえでのこともずっと抱えていただいてありがとうございました。」
事務所まで送り届けてくれた潮音さんは、忙しそうに去っていった。まだ仕事するつもりなのか。
そうして辿り着いた仮眠室。
部屋自体は決して広くはないが、ベッドとサイドテーブルに、テレビと洗面台。
最低限のものは揃っており、会社の人間はよく使っている。
「ベッドに寝かせていい?」
「あ、はい…!ありがとうございます。」
"すばる、ひい姉を守ってくれる?"
先程そう言っていたかえでは、俺の返答に今度こそ安心したのかすやすやと眠っている。
「……聞きたいことがいくつかある。」
「…はい。」
「嫌なことは、答えなくていいから。」
「いえ。穂積さんになら、大丈夫です。」
「今日会ったばかりなのに?」
人をそんな簡単に信用できるか?
冷たいから笑いと共にそんな言葉が口を注いて出てしまった。
怖がらせたか、そう思って隣を見やると、ひよりは困ったように笑う。
「こんな厄介ごと、普通は引き受けてくださらないですよ。
穂積さんはきっと、とても優しい方です絶対。」
「どっちなんだよ。」
"きっと"なんて言いながら、語尾には"絶対"が付いたちぐはぐの言葉に思わず笑ってしまった。
ひよりの高めの声は、鼓膜に優しく響く。
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