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「母が亡くなったのは、私はまだ高校生になるタイミングで、かえでは幼稚園で。
頼れる親戚は、先程お話した遠縁の松原さんだけでした。
彼女に、高校生の貴女がかえでと2人で暮らしていくのは無理だと言われて、私は返せる言葉が無くて。
高校生のバイト代なんて、たかが知れています。
何よりまだ幼いかえでを、1人にさせる時間が長すぎる危険がありました。」
「……もしかして、」
「テレビ局で仕事をされてた松原さんは、かえでを芸能界で活動させろと。
そうすれば出来る限りのバックアップもすると、そう仰いました。」
「かえでは嫌がらなかったのか。」
「最初は、私を芸能界に入れようとしたんです。ハーフのモデルの需要は絶対あるからって。」
「2人は…」
自分の目を指差して微笑んだひよりの瞳は、やはり綺麗な青色が入っていた。
「母が、イギリス人でした。
この瞳も、昔はよくからかわれたりもしましたけど、母が残してくれたものだと思って私は大切に思っています。
かえでの瞳の青は、もう少し暗くて少しずつ薄くなっていってますけどね。」
ひよりがアイスブルーのような透き通る青さだとしたら、かえでは深みのある藍色という感じだろうか。
「うん。2人とも綺麗な色だと思う。」
言葉はすんなりと音になった。
ひよりは、ありがとうございますとはにかんだ。そういう笑顔をもっと見たいと思ってしまうのは何故だろう。
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