999人が本棚に入れています
本棚に追加
/87ページ
「…っ、すいませ…っ」
「うん。」
「……自分が、情けないです。
松原さんの言葉は、確かにその通りで。何も言い返せない私には、結局かえでにしてあげられることが何一つ、無いんです。
勝手に1人で傷ついているだけなんです。」
「…それで、逃げ出したのか。」
「あのまま松原さんと一緒にいたら、これからもかえでと離れて暮らすことを了承してしまうと思って。」
「強行突破だな。」
全速力で突進して来たひよりを思い出して笑うと、ひよりも少し恥ずかしそうに眉を下げた。
「…かえでが、それで良いって言ってるんだから、私が抵抗する必要なんて本当は無いんですけど。
……私は、かえでと、一緒にいたいです…っ」
迷惑なお姉ちゃんですよね、か細い声でそう言ったひより。
「ちゃんと、言えばいい。」
「…え?」
「自分で言ったんだろ。離れて暮らしてても弟とは仲良しなんだって。
仲良しって、毎日毎日笑顔で接しあえることだけじゃないと思うけど。」
肩を抱かれて、こちらに寄りかかるような体勢だったひよりを解放し、至近距離で目を合わせる。
アイスブルーの瞳が、濡れて静かに揺れていた。
最初のコメントを投稿しよう!