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「……」
「傷ついたことも、悩んでることも、ちゃんとかえでに言えば良い。喧嘩したって別に良いだろ、兄弟なんだから。」
「かえでは、私にこれ以上呆れたり、怒ったり、しないでしょうか…」
「それは知らない。」
「え!!!」
先程まで伏し目がちだったひよりは、俺の発言に勢いよく顔をあげる。
その瞬間、俺はひよりの顎を固定するように右手を添えた。
「ほ、穂積さ…」
「ひよりはすぐ俯くから。まずはちゃんと前見る癖付けないとな。」
「……はい。」
「そのアイスブルーが見られないなんて、勿体ないだろ。」
「、」
言った後に、想像以上の自分の言葉の糖度に羞恥が募る。なんだこれ、柄でも無い。
気まずくなって、何も言わないひよりにそっと視線を合わせると、そのアイスブルーは驚いたように大きく開かれていて。
それから、目尻を下げてふわりと笑った。
「……穂積さん、ありがとうございます。」
「うん。」
ひよりの嬉しそうな笑顔は、俺の中の何かを満たしていく。
至近距離で視線を絡ませていることに恥ずかしくなったのか、何度か目を瞬いたひよりの方が今度は気まずそうだった。
薄暗い部屋の中でも、その頬が赤らんでるのが分かって俺の中の悪戯心が顔を出す。
「穂積さん、あの、手を離してください…」
「んーどうしようか。」
「な、なぜ!!!!」
より近づくと、ひよりは肩を分かりやすくびくつかせる。その顔には大きく"パニック"と書かれていた。
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