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side:shione
……私は、かえでと、一緒にいたいです…っ
昴たちを送り届けた後、俺は結局気になって暫くドア越しに話を聞いていたが、現場に向かう仕事の時間が差し迫っていたので、また駐車場へ向かっていた。
今日はどうやら家には帰られなそうだ。
「立ち聞きしてたっつったら、昴に殺されるな。」
苦笑いを溢すも、絞り出すような彼女の声は耳に残っている。
すると、ポケットのスマホが震えた。
「…はい。」
"お。お疲れ様、今話せる?"
この静かな夜には不釣り合いな明るい声が届いて俺は心なしか身体が重たくなる。
「社長…どこにいらっしゃるんですか。スケジュールに無い動きは秘書の疲労を蓄積させます。」
"ごめんごめん。今、煮詰まってファミレスで仕事してる。居場所後でメールしとく。
"……ファミレス…?1人で…!?
こんな夜遅くにやめてください本当に…。"
"良いじゃん女子高生でもあるまいし。
で?どうなった?"
「先程ご連絡した件ですか?
昴に、兄弟を仮眠室へ連れて行かせました。もう休んでいると思います。」
"そう。御苦労さま。"
「急な事態へのご理解、感謝します。」
"……なんか、思うところがありそうだね。"
「…どう見ても、訳ありな兄弟、というだけです。」
"ふうん、訳ありねえ。"
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