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「…っ、」
「かえで!」
かえでは、ひよりの姿に一瞬動揺を見せたがすぐに走り出して去っていった。
「…ごめん。最悪のタイミングだった。」
「いえ、こちらこそすみません。」
かえでは、収録や撮影に会いにくるひよりを頑なに避けていた。その真意を掴めないまま、俺は先程ひよりに、俺の楽屋にかえでがいると連絡をしたのだ。
「…この後も撮影あるみたいだから、スタジオ向かったんだと思うけど。」
「はい。かえではサボったりは絶対しません。」
笑って俺にそう言い切るひよりは、やはり傷ついた顔をしていた。
"俺はひい姉と一緒にいたくない…っ"
「(聞こえてた、よな)」
失敗した。2人を直接会わせて話をさせるべきだという考えが裏目に出た。
上手くできない自分に苛立って髪をくしゃりと乱す。
「…穂積さん。もうお仕事終わりですか?」
「?ああ…」
「お腹、すいてませんか。
作ってきたので、よかったら…」
そういえば先ほどから胸に大事そうに抱えていた大きな巾着袋。
恐らくかえでのためのものだろう。
受け取った俺はその質量に驚きつつも、頭を下げて去ろうとするひよりを呼び止めた。
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