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大きなお弁当箱には、色とりどりのおかずとおにぎりが入っていた。どれを食べても美味しいところから、ひよりが料理上手だと知る。
「お口に、合いますか…?」
不安そうにこちらを見るひより。
俺が箸を進めながら頷くとやっとホッとしたように表情を緩めた。
「…潮音さんの家でうまくやってんの。」
「はい…っ、とてもよくしていただいてます。」
ずっとうちの仮眠室にいるわけにもいかない。
でも、あの松原という女にひよりを近づけるのも危険な気がする。
どうしたものかと逡巡していた俺に、潮音さんは溜息を吐きながら徐に携帯を差し出した。
"もしもし昴?お疲れ様。
潮音さんから話聞いたよ、ひよりちゃん、うちにおいでよ。"
「…美月さん、良いんですか。」
"全然大丈夫だよ。潮音さん、なかなか家に帰って来ないから、2人で女子会たくさんできると思うし!"
「…(これはちょっと怒ってるな)」
"というか、何か面白そうなことになってるね?
とうとう昴にも特別な子ができたってこと?"
「なんなんですかその恥ずかしい言い方…そんなんじゃないですよ。」
電話が終わると、俺の嫁が優しくてごめんなと何故か潮音さんに笑顔で謝られた。
完全に惚気だと分かったのでイラついた俺は、「ワーカホリックも大概にしないと、美月さん怒って出ていっちゃいますよ。」と冷静に脅す。
潮音さんは焦り倒して電話をかけ直していた。いい気味だ。
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