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大好きだった母の死は、突然でした。
だけど、私は急に目の前からいなくなってしまった母を悲しむ余裕さえありませんでした。
隣にはまだ、私より一回り小さな手で不安そうに私の手を握る、かえでが居たから。
これからどうすれば良い?
怖い。怖くてたまらない。
不安で、押し潰されてしまいそう。
先の見えない現実に足がすくんでいました。
そんな時、急に、かえでは私に観たい映画があると言って。かえでがそんな風に我が儘を言うのが珍しくて、レンタルショップへ立ち寄り、すぐに借りました。
「…本当にこんな難しそうな映画わかるの?」
「馬鹿にすんなよ!俺は大人なんだ!」
「…じゃあお姉ちゃん、ご飯の用意するからね。」
ムキになるかえでに笑って台所へ向かおうとすると、
「ひい姉も一緒に観るんだよ。」
その日のかえでは何故だか、とにかく強引で。
戸惑いながら私も、結局一緒に観ることになって。
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