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――しかし、俺は出回る予定だった記事の写真を見た時に酷く驚いた。
今までの記事で1度もツーショットを抜かれたことの無い翠さんが(くだらないトリミングはあったが)、志麻を抱きしめている写真。
「(…これは、火遊び程度の関係じゃないだろ。)」
今までの女とは違う。
一瞬で、そう勘づいてしまったのだ。
ドラマの共演が決まって、内心でこの女の動向を探ろうと画策していた俺になかなか尻尾を見せなかった志麻は、撮影中に俺との写真を週刊誌に撮られた時に啖呵を切った。
「綺麗事を言うな、お前もそうやって翠さんを利用しようとしたんだろ」と明け透けに言った俺に、この女は清純派らしからぬ険しい顔で睨みつけてきた。
真っ直ぐに、「私は命をかけてこの役を演じている」と伝え、そして。
"今まで翠の何を見て来たのよ。
そんな人気の出方ならクソ食らえだわ!!"
「…"クソ食らえ"て。」
「あ、また思い出して馬鹿にしてるな?」
まあ結局、全て俺の杞憂だったということだ。
翠さんが執着しているからと警戒していた女は、ただただ翠さんに一直線に向かう爆走女だった。
今にも脱げそうなパンプスで不格好に走り出す後ろ姿は、なかなかに面白かった。
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