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主人公は警察官で、とある殺人犯を追いかけるというサスペンスストーリーでした。
でも。
調査を進めていくうちに、その犯人には過去に辛い出来事があったことが分かって。
復讐として、罪を犯した犯人の彼は、逃亡の末に行き着いた街の食堂に、ふらりと立ち寄ります。
その食堂で彼が注文したのは、大盛りの白ごはんと、豆腐のお味噌汁と、生姜焼き。
なんてことない、普通の定食。
でも、その犯人は、ごはんを一口食べて、一筋、涙を流すんです。
過去の何か優しい記憶を思い出したのか、なんなのか。理由の説明は、無かったんですが。
"なんだ、俺、生きてたのか。"
ただポツリと、そう呟きました。
感情を動かすことなく淡々と復讐を遂げた彼は、自分をまるで死人のように考えていた。
だけど。
ご飯が、美味しかった。
それだけのことで、彼はどうしようもなく自分が生きていたことを実感してしまったのです。
ひたすらにご飯をかきこみながら涙を拭う、そのシーンはとても印象的でした。
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