03.レッドは、知る

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_____ ___ 私が働く定食屋では、夜はお酒も提供し、昼のランチ時とはまた別の賑わいを見せる。仕事終わりのサラリーマンで、そろそろお店も混み合う時間だ。 「ひよりちゃん、3番テーブルさんにこれお願い」 「はい!」 店長も、店長の奥さんもとても優しく、働き始めた当初からずっとお世話になってきた。 社員になることも1番喜んでくれた。 ここで働けなくなるのは寂しいが、これから一生懸命本社で頑張ることが恩返しになる筈だ。 「お待たせしました、晩酌セットです。」 「ありがとう。」 3番テーブルのお客さんは、初めて見る顔だった。 とても高級そうなスーツ姿で、でも見せる笑顔や物腰は柔らかく、そして何より顔が驚くほど整っていた。 穂積さんで少しは慣れたかと思っていたけど、また違った美、という感じだ。 「……三ツ谷ひよりさん、だよね。」 「……は、はい?」 そんなことを考えていたら、急に名前を呼ばれて間抜けな顔で返事をしてしまった。 「初めまして。昴の事務所の者です。」 やはり笑顔を携えたまま、彼はそう告げた。 「…、!そ、そうでしたか…! 穂積さんには、大変お世話になっていて…」 「そうみたいだね。 ちょっと、度が過ぎて仲良しだと聞いてる。」 「っ、」
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