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俺は、撮影の合間にかえでの収録現場へ向かった。
絶賛撮影中のかえでは俺に気がついていないらしく、スタッフに挨拶をしてモニターでその演技を暫く見ていた。
「…なんか、変だな。」
今日のかえでは、問題なく役をこなしてはいるが、どこか歯切れが悪いような気もする。
そして、俺は漸くその違和感に気づいた。
「___かえでっ、!」
俺がそう叫んだ時には、既にかえではセットのベンチに崩れるように座り込んでいた。
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「……すばる?」
「気がついたか。」
医務室のベッドに運ばれたかえでは、30分ほど寝ていたが目を覚ましたようだ。
「……撮影は?」
「大丈夫。お前のシーンは問題なく済んだよ。今は別キャストの部分を撮ってる。」
「そっか。」
「お前ね、体調悪いなら無理すんな。
スタッフに心配かけたら意味無いだろ。」
かえでのおでこを冷えピタ越しに小突くと、小さな声でごめん、と呟きが聞こえた。
「熱もそんなに高くは無いけど。
まあでもお前の姉ちゃんは連絡したら卒倒しかけてた。」
「ひい姉は…?」
「学校終わって、多分爆速で今向かってるところ。」
恐らく、そろそろ到着する頃だろう。
「連絡しなくて良いのに。」
布団を口元までかぶって、こちらを睨む深青の瞳の少年。
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