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「俺は、昔からレッドが好きだったんだ。
流石に今は戦隊ヒーローは卒業したけど、でも、すばるのことは勿論知ってた。
俺の母さんが死んだ頃、すばるの映画観たんだ。」
「…うん。かえでは、あれが俺だって分かってたのか。」
「当たり前だろ。気づかないのひい姉くらいだよ。」
…普通そうだよな、頷きながら俺は苦笑いを零す。
「あの映画を選んだのは、すばるが、インタビューで言ってたからなんだ。」
"この映画を観て、誰か、1人でも良い。
少しだけ、前を見る力が湧くような。
そういう気持ちになる人がいれば幸せですね。"
「、」
それは、俺がこの役を演じる時に込めた願いだ。
「ひい姉、あの頃本当に痩せてて、元気無くて。
俺どうしたら良いか分かんなくて、でもレッドがそんな風に言う映画観せたらどうかなって思って。
そしたら、本当に、ひい姉を助けてくれた。
すばるは、俺たちのヒーローだよ。」
「、かえで。」
俺は、布団をそっと剥いでかえでの顔を見る。
ぽろぽろ泣くかえでは、役者じゃなくてただの小さな男の子だった。
「あのタイミングで、すばるに会えたのは、もう偶然じゃないと思った…っ、から、」
しゃくりあげて泣くかえでを宥めるように、俺はその小さな手を握った。
「かえで、分かったから。もう、分かったから、ちゃんと教えて。
お前は、一人で何と戦ってるんだ。」
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