03.レッドは、知る

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◻︎ 「し、失礼します…っ、」 暫くして、真っ青な顔のひよりが現れた。 「さっき、また寝たところ。」 駆け寄ってきて、すやすやと眠るかえでの姿を見たひよりは、肩の力が抜けたようだった。 「よかった…、 今の私は、かえでの体調不良にも気がつけないんですね。」 頼りなく、かえでの頬を撫でながらそう呟くひより。側に居たい。その気持ちが痛いほど伝わる仕草だった。 "そろそろ、俺と暮らしたいならデビューしろとか、言い出すつもりだと思う。" かえでの言葉を思い出し、俺はなんだか不安になってひよりの名前を呼ぼうとした。 すると、こちらを振り返るひよりと視線が交わる。その表情は不安で覆われていて、最近やっと見せるようになった明るい笑顔とは程遠かった。 「……穂積さん。今まで、たくさんご迷惑をおかけしてすみませんでした。」 深々と、座っている俺に向かって一礼したひより。 「…なに、改まって…」 「…明日、松原さんとお話することになりました。」 「……は?」 「…このまま、逃げているわけにもいきません。 きちんと話をして、分かっていただける努力をします。」 「ちょっと待て。あの女に呼び出されたのか。」 俺は自分でも分かるほどに困惑した声で、ひよりに答えを急かす。
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