03.レッドは、知る

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「……穂積さん。私、ただの一般人なんです。 こんな風に貴方と、お話できてるのが非日常です。」 「……なに、それ。」 「私は、私のいるべき場所に戻るだけです。」 「…ひより、そんなんで俺は納得しない。」 いるべき場所ってなんだ。 ひより自身から紡がれてるとは思えないほどらしくない、遠回りな言葉ばかりが並べられる。 それに苛ついて今度は俺から言葉を発しようとした瞬間。 「、もう、これ以上は関わりたくないってことです…、失礼します…っ」 ぎゅ、と目を瞑って悲痛な面持ちでそう言ったひよりは、俺の手の中にメモを無理やり押し込めて、パタパタと出て行った。 すでにくしゃくしゃになっているそのメモには、細く綺麗なひよりの字が並んでいた。 苛立ちを抑えられない俺は、椅子に腰掛けて1つ、深呼吸をする。 落ち着け、そう思っても、何かが自分の奥から迫り上がってきて感情を冷静に保つのが困難だった。
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