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涙を拭いながら、やっぱり私はどんだけ失礼な奴なんだと恥ずかしさで死にそうになる。
ごめんなさい、穂積さん。お名前どころか顔も覚えていなかった私はやっぱり大馬鹿者です。
暫く、2人のなごやかなトークで順調に進んでいくその番組を見つめていたが、私は意を決して彼女へと向き直り、口を開く。
「…松原さん。」
「…なに。」
「私は、卒業したら、春から働きます。やりたいことも勉強したいことも、まだまだたくさんあるんです。
居場所は、ここじゃない、です。ごめんなさい。」
あの日、生まれた夢はそんな簡単に切り捨てられるものじゃない。
他の人に単純だと馬鹿にされても、
私にとってはとても大きい出来事だったから。
自分の言葉で、やっと、気持ちを言えた。
極度の緊張状態にあった私は、そのことに安心したのか、ぽろぽろと再び涙が出てくるのに気がついた。
深々と、頭を下げている私のすぐ傍で長いため息が聞こえる。
「ひより、いつの間にそんな風に話せるようになったの。」
「…え、」
顔を上げると、少しだけ表情が緩んだように見える松原さん。
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