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「……今、なんと?」
「ナインズプロは、かえで君と契約したいと考えています。」
「…ほ、本気ですか?」
「当然です。こんなこと冗談では言いません。」
戸惑う松原という女を前に、潮音さんは静かに説明を続ける。
「かえで君が今所属しているのは、子役を養成する事務所ですよね。今後、かえでくんの飛躍を望むなら答えは明白だと思いますが。」
「それは、もちろん、願っても無い話ですが…」
"社長がかえでを気に入ったらしい。
うちで引き受けたいと言ってるし、俺もそう考えてる。"
潮音さんがそう連絡してきたのはつい先日だ。
役者としてのかえでを認めての話だし、ここ1か月、かえでの姿勢を見てきた俺も納得できる。
"契約にあたって、今手続きとかいろいろ進めてるところだけど。
兄弟の関係性については、こっちから提案できることなんて限られてる。
あいつらが、自分達でぶつからないと意味が無い。"
現状の2人を危惧する、やはりお人好しな潮音さんの言葉は、嫌というほどに的を得ていた。
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