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「では交渉成立ですね。
契約を交わす上で、条件があります。」
明るく穏やかなトーンで話に入った社長は、笑顔を貼り付けたままだ。
「1つ。かえで君は、今後うちが管理するマンションに住んでもらうことになります。
そこは、お姉さんも勿論一緒に住める場所です。」
「っ、」
女は、目を見開いて悔しそうに唇を噛む。
「…ご了承いただけますね。」
念押しする社長の言葉に圧倒されたのか、小さく頷いた。
「そしてもう1つ。
うちは、自由が売りの事務所なんでね。
かえで君がこれから、学校を優先したい、他の世界を見てみたい。そう思った時は必ずそれを尊重します。お姉さんも、それを望んでいますよね。」
急に話を振られたひよりは背筋を伸ばす。
「はい…っ、」
こくこくと頷くひよりに、社長は笑っていた。
「……なるほど。ひよりをこの世界に入れたい私の思惑を閉ざしたいわけね。」
そこで漸く女はため息をついて諦めたようにそう呟いた。
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