03.レッドは、知る

25/41
前へ
/87ページ
次へ
「では交渉成立ですね。 契約を交わす上で、条件があります。」 明るく穏やかなトーンで話に入った社長は、笑顔を貼り付けたままだ。 「1つ。かえで君は、今後うちが管理するマンションに住んでもらうことになります。 そこは、お姉さんも勿論一緒に住める場所です。」 「っ、」 女は、目を見開いて悔しそうに唇を噛む。 「…ご了承いただけますね。」 念押しする社長の言葉に圧倒されたのか、小さく頷いた。 「そしてもう1つ。 うちは、自由が売りの事務所なんでね。 かえで君がこれから、学校を優先したい、他の世界を見てみたい。そう思った時は必ずそれを尊重します。お姉さんも、それを望んでいますよね。」 急に話を振られたひよりは背筋を伸ばす。 「はい…っ、」 こくこくと頷くひよりに、社長は笑っていた。 「……なるほど。ひよりをこの世界に入れたい私の思惑を閉ざしたいわけね。」 そこで漸く女はため息をついて諦めたようにそう呟いた。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

999人が本棚に入れています
本棚に追加