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「…あなた達、本当にいつの間に、ナインズのような大きな事務所と繋がっていたのよ。」
「教えるかばーか!」
「…、かえで…っ!」
悪態を吐いてべーっと舌を出すかえでと、焦って制するひよりを見て、女はふっと笑った。
それは、どこか清々しい笑顔にも見えた。
「……ひより、これ返しておくわ。」
立ち上がった女は、鞄から取り出したものをひよりに投げる。
「今までかえでが稼いだお金よ。」
「……!?!?」
投げつけられた通帳の中身を見たひよりは、目を大きく見開いて大袈裟にびくつく。
俺すげー!と、かえでが隣ではしゃぐ。
「……馬鹿ね。私の言う通りにしてたら、あんた達2人でそれの倍は稼げたわよ。」
「そ、それでも、私は、自分の夢を大事にしたいです。だって、かえでと2人で見つけたから。」
「…ひより。あんた、やっと私の目を見て話すようになったわね。
あの日、ひよりを拐っていったそこの彼が理由?
私が気付かないわけないでしょう。
今日だって急に登場して。どういうつもり?」
女は急に俺の方を見て笑う。
俺も負けじと、口元に笑みを浮かべた。
「…どういうつもりも何も。
体が勝手に動いたもので。」
そう微笑を貼り付けたまま、ふざけた調子で伝える。
でも本当だから仕方ない。
女は、まるでヒーローみたいなこと言うのね、と面白そうに口角を上げた。
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