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「さて。上手くまとまってよかったね!」
嬉しそうに笑って拍手をする社長の横で、潮音さんがげんなりした表情を浮かべていた。
「俺は疲れましたよ…」
「ごめんね、いろいろ任せたから。」
「あんたが想定外の動きするのが疲れるんだ!」
「え、僕?」
わざとらしく驚いた演技をする社長に潮音さんの目が三角になっていた。
かえでの現事務所との交渉や、契約に関する手続きなど、主に潮音さんが進めてくれたが、その背景で社長が先々に色んな担当者に会ったり聞き込みをしたりしていたようだ。
「自分の事務所に入る子がどんな子か、知っておきたいでしょ。」
平然とそう言う社長に、だからそれはあんたの仕事じゃないんだと疲労感たっぷりで潮音さんが諭していたが、社長はどこ吹く風だった。
「…あの、本当に、なんとお礼を言えばいいか…」
「俺たちは、人助けしてるわけじゃないから。
かえでの演技を見て、一緒に働きたいと思って動いただけ。」
戸惑うひよりに、そう最もらしく説明する潮音さん。
女子にも安全なマンションを血眼になって探していたことは黙っておく。
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