03.レッドは、知る

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「社長…さん。」 「…僕のこと覚えてるかな。」 「勿論です。」 「……怖がらせたね。」 「いえ、私のことを考えて言ってくださっていたのだと分かります。 …だけど、ごめんなさい。 私、社長さんの言うこと、聞けそうにありません。 せ、世界が違うって言われて、その通りだと思いました。迷惑になるなら私は離れなきゃって。 だけど、やっぱりどうしても、穂積さんが好きです。」 「、」 申し訳ありません、なんて言葉をもう一度呟いて、ひよりは深くお辞儀をする。 ____ひより、今どんな顔してる? 「…君は真っ直ぐだから、余計心配になるんだよ。」 深く息をついた社長は、ひよりちゃん、と名前を呼ぶ。 そして漸く頭を上げたひよりに、続ける。 「…一般人の君に、この世界が今以上に近い存在になる。その危険は分かっている?」 「わ、分かっています。きちんと覚悟を決めて、負けないように訓練して備えて戦って、穂積さんを守ります。」 「ちがうよ馬鹿。そんな兵隊みたいなこと頼んでないから。」 「ば…」 社長は呆れたような表情と、らしくない口調でひよりを制する。 「これからすぐに、何かあったら報告すること。それを約束できる?」 「…え…」 「抱え込まないで、必ず言うこと。 あのね、僕は何も昴に及ぶ危険だけを言ってたんじゃない。君の立場でも言ってたんだよ。」 「……わたし、?」 「…君だって夢があるんでしょう。 変に巻き込まれてそれが叶わなくなったらどうするの。」 「…そ、そっちは考えていませんでした…」 「ひい姉、さすが抜けてるなあ」とかえでが隣で突っ込む。 「…お互いに、お互いを邪魔する可能性だけを考えて自分のことなんてお構いなしで。 突っ走るお馬鹿さん達見てたら、ちょっと助けたくなってきたんだよね。」 "お馬鹿さん達"…? 俺も漏れなく入っていることに不服で社長を睨むと「否定できないだろ」と言わんばかりに笑みを返された。 「まあ、頑張りなさい、2人で。」 優しく笑った社長を見ても、ひよりは事態をうまく飲み込めずに戸惑っているようだった。
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