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「(…こんな奴、居たっけ。)」
何も発しない俺に、より不安になったのか
「あの…?」
と小さな声がこちらに問いかけてくる。
とにかく白い彼女の肌が、その存在を一層不安に見せた。
そっちこそ、大丈夫なのか。
そう言いたくなるような頼りなさに言葉を紡ごうとした時。
「…ひより?何やってるの、話は終わってないわよ!」
俺たちが座り込むその廊下奥から、声が聞こえてきた。
「…っ、」
びくり、本当に大袈裟ではなく身体をびくつかせた彼女はその場で固まってしまった。
微かに震えているようにも見える彼女の強張った表情をもう一度みて、涙の跡に気がつく。
__これは、厄介なことに巻き込まれる気がする。
頭はいつものように冷静に危険信号を出すも、なぜか俺は彼女の細い腕を掴んで、声がするのと反対方向に走り出した。
「……えっ、」
あー俺明日オフだから早く帰りたいんだけど。
やはり頭ではそう思うのに、彼女の腕を握る手に力がこもった。
「…なっ、!?待ちなさい…!」
後ろから焦ったような女の声が聞こえるも、俺はエレベーターで迎えの車が待つ駐車場へと急いだ。
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