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「____ひより。」
俺は、静かに名前を呼ぶ。
こちらを振り返る彼女のアイスブルーが濡れて滲んで見えるのは、俺も泣きそうだからなのか。
「…ひより、お前の夢はちゃんと守るよ。
だから、頼むから、隣にいて。」
我慢できなくなったひよりは再び大粒の涙を溢し始めた。
近づいて抱きしめるとその細さと小ささに俺は壊れ物を扱うような気持ちになる。
視界の端で、社長と潮音さん、かえでが一仕事終えたと言わんばかりの後ろ姿で部屋から出ていくのが見えた。
その瞬間、かえでだけが、くるりと振り返る。
"かえで。俺、お前の姉ちゃん貰ってもいいかな。"
先ほどこっそりとかえでだけに伝えた言葉。
"よろしく、レッド。"
そう口パクで俺に返したかえでは嬉しそうに笑っていた。
だからレッドって呼ぶのやめろ。
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