03.レッドは、知る

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俺はひよりの頬に手を添える。 「…だから。早めに俺と結婚してくれる?」 その桜色の唇にキスを落としてそう言うと、ひよりは真っ赤な顔で口をパクパクさせていた。 スキャンダルだってなんだって、断定が出来ないから記事は変に取り沙汰されるし好奇心を煽る。 だったらもう、こちらから決定打を打ってやりたい。 「けっ、こ…け…!!!!」 急に言語不自由になったひよりに鶏かよと笑うと、からかわないでください、と真っ赤な顔のまま俺を睨む。 「ひよりが良ければ、だけど。」 なんて、変な譲歩を見せる自分は、やっぱりひよりのことになると臆病だ。 でも、ふわりと笑って 「…美味しいご飯、毎日作りますね。 厳しい世界で、荒波に揉まれて帰ってきた穂積さんが、安心できるようなもう一つの世界を私が作りたいです。私も、守りたいです。」 荒波ってなんだよ、と思わず吹き出してしまった。 こいつはやっぱり時々言葉のチョイスがおかしい。 だけどそれさえも、愛しい。 笑顔の彼女に、俺はもう一度キスをした。
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