03.レッドは、知る

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_____ ___ 「……スピード婚にも程があるでしょ。」 いつもの控え室で、志麻は新聞片手にそう言う。 「うるさい。」 春から会社員となったひよりに、ああは言ったけど、さすがにすぐに結婚を迫るつもりはなかったのだが。 "昴さん、お会いしにくい環境が続いてしまうのは私だって嫌です。い、いつでも、覚悟できてます…っ" 今から出陣でもするのかという勢いだったが、真っ赤な顔でそう言われてしまったら、こちらももう我慢できないというもので。 「…翠から、暫くは別居婚だって聞いたけど。」 本当にこの会社はプライベートが無い。訴えたら勝てるんじゃないのか。 「…良いんだよ。折角久しぶりに兄弟で暮らしてんだから。」 ひよりと、事務所を移籍したかえでは、ナインズが用意したマンションで2人暮らしを始めた。 かえでは、結婚を決めた俺達に遠慮しようとしていたけど。 "結婚生活は、これから長いんだから。 暫くは、かえでにお姉ちゃん譲りますよ。" そう言うと、じゃあ甘えよーっと、と嬉しそうに笑っていた。 「…やっぱり、昴も出会ったわけだ。 "距離なんてお構いなしに、追いかけたくなる人"」 ニヤリと笑ってそう言う志麻の思惑の通りなのは面白くないが、否定はできない。
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