999人が本棚に入れています
本棚に追加
_____
___
「……スピード婚にも程があるでしょ。」
いつもの控え室で、志麻は新聞片手にそう言う。
「うるさい。」
春から会社員となったひよりに、ああは言ったけど、さすがにすぐに結婚を迫るつもりはなかったのだが。
"昴さん、お会いしにくい環境が続いてしまうのは私だって嫌です。い、いつでも、覚悟できてます…っ"
今から出陣でもするのかという勢いだったが、真っ赤な顔でそう言われてしまったら、こちらももう我慢できないというもので。
「…翠から、暫くは別居婚だって聞いたけど。」
本当にこの会社はプライベートが無い。訴えたら勝てるんじゃないのか。
「…良いんだよ。折角久しぶりに兄弟で暮らしてんだから。」
ひよりと、事務所を移籍したかえでは、ナインズが用意したマンションで2人暮らしを始めた。
かえでは、結婚を決めた俺達に遠慮しようとしていたけど。
"結婚生活は、これから長いんだから。
暫くは、かえでにお姉ちゃん譲りますよ。"
そう言うと、じゃあ甘えよーっと、と嬉しそうに笑っていた。
「…やっぱり、昴も出会ったわけだ。
"距離なんてお構いなしに、追いかけたくなる人"」
ニヤリと笑ってそう言う志麻の思惑の通りなのは面白くないが、否定はできない。
最初のコメントを投稿しよう!