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「環ちゃん…。」
後ろから声をかけられ、腰を抜かしそうなくらい驚く。
「キャ!アイダさん!ごめんなさい!これ。」と慌てて忘れ物のノートを差し出す。
「え、俺忘れてた?参ったな。有難う。」
アイダさんは、頭を掻きながらノートを受け取る。
「もしかして、アイダさんって画家なんですか?」
小屋の中にはデッサン途中のキャンパスがたくさんあったからだ。
「ん?ああ、部屋を見たのか?まあ、そうだよ。」
「よかったら…描いている絵、見せて頂けますか?」
アイダさんは、明らかに困惑している顔になった。
「どうしようかな…。いいんだけど、環ちゃんって何歳だっけ?」
「17歳です。高2です。」
「うーん。来年まで待てるかな?」
「えっ。どうしてですか?」
「絵のタイプがちょっと過激なんだ。エッチを超えた内容だから、高2だとまだ早いかなって。」
「そんな…。」
私は性に対して消極的だけど、アイダさんの作品なら見たい…と何故か強く思った。
「海霧ってきたな…。車出すよ。」
アイダさんは、それ以上私を小屋に近づけようとせず、車に入るように促す。
なんとなくだけど、アイダさんにはもう会えない気がして、車に乗っている間、ずっと彼のウィンドウブレーカーの袖を握ってしまった。
道中アイダさんは何も言わず「ノンノ」で私を降ろし、素っ気なく「じゃあ」と車で走り去った。
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