4. 訴える美少女

2/2
74人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
 妖艶な美少女は鋭い目つきで、キャンパスの中からこちらを睨んでいる。  美少女の口は少しだけ開いており、まるで「見ないで…!」とつぶやいているかのようだ。  深い…強い…「怒り」を美少女から感じる。  その理由は、美少女は全裸で首輪を()められているから…だけではない。  四つん這いになり、恥部を晒す美少女には手足がない。  正確にいうと、両手首と両足のひざ下がなく、傷を覆うかのように、先端は包帯でぐるぐる巻きにされている。  そのため犬のような体制をとるしかなく、侮辱に耐えながら4足でやっと立っている。  胸の膨らみや骨盤の発達状況から判断すると、美少女は私よりも年下、多分、中学生くらい。  絵の全貌を見て、まずは「絵を描いてもいいの?」と思った。  ただのヌードではない、未成年の裸…しかも、むごい虐待を受けている。  アイダさんが職業を言わない理由がわかった。    おそらくこんな絵を描いていると知ったら、叔父はアイダさんを軽蔑するだろう。  だけど…目が慣れてくると、切断された手足より、怒りを訴える美少女の表情に魅了されている自分に気づく。  一枚の絵がこんなに心を揺さぶるなんて…。  絵画鑑賞が趣味…という人の気持ちが初めて理解できた。  この絵と向き合っていると、違う次元に引っ張られるような感覚になる。  人間の汚い本質と美しい生命力を同時に表現している…。  はじめは目を反らしたくなるような光景と思うが、徐々に地獄の中で勇敢に生きる少女を応援したくなる…。  いつの間にか、私はアイダさんの作品のファンになってしまったようだ。  他の作品も見ようかと思ったが、アイダさんの意志を尊重して、来年まで待つ事にした。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!