1. 傘が苦手な理由

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1. 傘が苦手な理由

 私は、傘が苦手だ…。  東京で出会った人達に打ち明けると「珍しい事じゃないよ。」と言われる。  ほとんどの人は、もしくはを嫌がっていると考える。  誤解がないように、苦手な理由をきちんと説明する。  共感してくれる人もいれば、対策をアドバイスしてくれる人もいる。  どちらも有難いが、相手が反応している間、私の意識はちょっとだけ飛ぶ。  直線距離で1,000キロ強…。私が18歳まで育った町…。  北海道(ほっかいどう)目梨郡(めなしぐん)羅臼町(らうすちょう)、世界遺産になった知床(しれとこ)半島にある小さな町。  知床には真っ直ぐな雨がない。  子供用傘の小さな防御範囲をうまく超えて、雨は侵入してくる。  結果、傘をさしていても濡れてしまう。 「雨の降る方向を見て、傘の傾きを変えるのよ。」  母親は教えてくれたが、雨の降る方向はコロコロ変わる。  雨の日は長い通学距離がより苦痛になり、下校時は傘を閉じて走る習慣がついてしまった。  傘をうまくさせない…だから傘が苦手なのだ。
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