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しぶしぶ手を伸ばし、眩しさに拒絶する瞼をシバシバとしながらディスプレイも見ないで電話に出た。
「……んもしもし?」
『拓ちゃんっ!?』
夜なのに、デカイ声が飛び込んでくる。
「なに?」
『用意した?』
「なんの?」
『明日のバーベキューのだよっ!』
「ほとんどレンタルなんだし、なんも用意するもんなんてないでしょ」
『あるさ! UNOでしょ?』
「バーベキューだよ?」
『いいじゃん楽しいじゃん! UNOッ!』
「はいはい……」
『んで、バトミントンでしょ? フリスビー……』
「大荷物じゃん」
『あ! 拓ちゃんビデオカメラ持ってきてよっ!』
「携帯でいいでしょ」
『だめだよぉ~、画質いい方がいいじゃん! ほら、ズームとかだって、ねっ!』
「へい、へい」
『ちゃんと撮ってよね! 俺たちのメモリー』
「はいよー」
『明日、楽しみだねぇ~。俺、もうワックワクしちゃって!』
「……わーたっよ。んで? 用はそんだけ?」
僕は、さっきまでいたあのまどろみの中へ早く戻りたくって、電話を早々に切り上げようと発した言葉に、騒々しかった平太が急に黙り込む。
『…………』
電話は繋がったままなのに、気持ち悪いほどの無音。
「……平ちゃん?」
『拓、オレさ……明日、告白するわ……』
「え?」
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