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今までだって、お互いに好きな子の話はしたことがある。
でも、僕らは高校が男子校だったこともあって、未だ恋人を持ったことがない。
だから、今までずっと平太の横は僕だった。平太のことは僕が一番わかってた。
でも、恋人が出来ちゃったら……そうはいかないよね。
入学式で出会ってからずっと想い続けてきた平太の長い片想い。半年間黙って想い続け、残りの半年間はハッキリとした告白じゃないけど、アプローチも何度となくチャレンジしてきた。
だから、僕もどっかで決着がつくことにホッとした。
その答えが、明日わかるんだ……。
……頑張って……。
目を瞑ってもなかなか眠れなかった。きっと平太も一緒だろう。ああは言ってたけど、平太もなかなか割り切れない男だから。
朝起きて、平太に頼まれたビデオカメラを引っ張り出した。それを手に眺めると、昨日の平太の声が頭をよぎる。
『ちゃんと撮ってよね! 俺たちのメモリー』
フッと頬が緩んだ。
あぁ、……ちゃんと撮ってやっから。
ビデオカメラをかばんへ突っ込み、UNOも突っ込んで家を出た。
ドアを開けた先に見えたのは、輝く太陽の光をサンサンと浴びて、僕に親指を立てている平太の姿。ギチギチ音が立つようなウインクをかましている。
下手くそなんだからやめとけばいいのに。
「バトミントン持ってきた?」
「持ってこないよ。お前が持って来いよ」
「え~、ケチー。ってじゃーん」
平太はスポーツ用品店のでっかいショップバックを開いた。中にはバトミントンとフリスビーと、キャッチボールセットまで入っていた。
「よりどりみどりじゃん」
「でしょ~」
「UNOとビデオカメラは持ってきたよ」
「いえ~い! さすが拓ちゃん!」
パンッとハイタッチしたらそのままガシッと肩を組まれる。平太は僕より背が高いから、すぐ肩を組んでくる。
二人で並んで、みんなと待ち合わせしている駅まで移動。その間平太は雑談ばかりしていた。一度も告白の話題も、相手の美香ちゃんのことも話さなかった。
待ち合わせ場所へ着くと、すでにだいたいのメンバーが集まっている。平太は唇を噛みながらソワソワと、友だちと話す彼女の方をチラチラ伺っている。
なんともまぁ、わかりやすい。
告ろうっていうのに、その前にバレません? ソレ……。
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