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「母さん、お誕生日おめでとう! 今年は私とお姉ちゃん二人一緒にプレゼント選んだんだよ。見て、見て!」
そう言って私と姉は母にプレゼントを手渡す。母は満面の笑みでプレゼントを受け取った。
「まあまあ、ありがとうね」
母は紙袋の中に入った箱を次々に取り出しテーブルに並べる。
「あら? これ……」
私と姉は異口同音に答える。
「化粧品!」
私はひとつひとつを手に取り説明を始めた。
「これとこれは基礎化粧品。朝晩必ず使うこと。あと、外に出るときはこれつけてね、日焼け止め。それから……」
母は目を丸くしてテーブルに並べられた化粧品を見つめている。その日から私たち姉妹による母へののお手入れ指導が始まった。最初面倒がっていた母も効果が出始めるとまんざらでもない様子で鏡を見つめるようになっていく。元々整った顔立ちの母は肌がきれいになるだけでずいぶんと印象が変わっていった。毎日忙しくしているおかげで太ることもなくスレンダーな体型を維持していたのでダイエットの必要はない。あとは肌のお手入れをしつつ同窓会当日を待つだけだ。
「今日さ、パート仲間の吉田さんに最近キレイになったんじゃないの? って言われちゃったわよ」
嬉しそうにそんな報告をする母を見て私と姉は微笑んだ。そしていよいよ同窓会当日。
「ねぇ、お姉ちゃん、母さん大丈夫かな? 倉橋さんとちゃんとお話しできてるかな?」
私と姉はネット検索により倉橋氏のアカウントを発見していた。日々の呟きを見るに未だ独身のようである。
「ま、楽しみにして待ちましょう!」
同窓会は夕方までのはずだ。そろそろ帰ってくるかな、という頃私と姉のスマートフォンが同時に震えた。母からのメッセージだ。
「お!」
「あ!」
そこには二次会に行ってきます、という母からのメッセージがハート付きで表示されていた。私たちはそわそわしながら母の帰りを待ち続ける。
「ただいまぁ」
ほろ酔い加減の母が帰宅したのは夜十時過ぎだった。
「どうだった?!」
勢い込んで尋ねる私たちの顔を見て母が噴き出す。
「なによ、あんたたち」
同窓会の様子を聞こうと目をキラキラさせている私たちに向かい母はちょっと自慢げにスマートフォンの画面を見せる。
「おおお!」
私たちは大興奮で叫ぶ。そこには倉橋氏の連絡先が表示されていたのだ。しかも来週二人で映画を観に行くことになったという。母は今年の同窓会の様子を私たちに話してくれた。
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